愛媛の狛犬探訪。
今回は、明浜町の若宮神社にある狛犬についてご紹介します。
愛媛南部にある明浜町は、「みかん」と「潮風」という言葉がよく似合う地域で、入り組んだリアス式海岸が特徴。高台からはこんな絶景も眺められます!
明浜町の高浜地区は石灰産業で栄え、一時期多くの人が移り住んだため家がひしめきあうように建てられています。
その小路を探検するように歩いていくと、若宮神社にたどり着きます。(今回は地元の方に案内していただきました)
その狛犬がこちら!
なんと「河童の狛犬」です。
右脇に抱えているのは大きな鯛。
日本でも河童のかたちをした狛犬は、3体しかないと言われていますが(他は、岩手県遠野市の常堅寺、長崎市の諏訪神社)、なかでも鯛を抱えているのはここだけ。希少な狛犬です。
なぜ河童なのかと言うと、この地域には戦国時代から伝わる「河童伝説」があります。
城主の宇都宮正綱がいたずらする河童を懲らしめ「二度と悪さをしない」ことを条件に見逃してやったところ、その次の日から城の前に鯛が置かれるようになったとか。
その伝説を大切に言い伝えてきた地域の方々が明治12年に奉納したそう。
河童の頭を撫でると頭痛が治ったり頭が良くなるという言い伝えがあるため、頭のお皿は見事に磨り減ってツルツルになっています。
ちなみに、河童のかたちが妙にリアルなのは、奉納されていた木彫りの河童をその型のまま石造りにしたからだそう。(『明浜町誌』より)
愛媛では河童のことを方言で「エンコ」と呼びます。
八幡浜市穴井では毎年旧暦4月5日に「エンコ祭り」が行われるなど、海や川での水難と隣り合わせの暮らしをしてきた地域には河童伝説も多く残っています。
河童に親近感をおぼえてしまった不思議な力を持つ狛犬さん、一見の価値ありです。
参考文献:「えひめの伝説」(アトラス出版)
●若宮神社
愛媛県西予市明浜町高山